過日このあいだ)” の例文
過日このあいだも写真を一緒に取に行ったので皆んなにからかわれて居ました、ここへも入来いらっしゃる方なのと無頓着に言聞けられて、貞之進のはらわたは煑えるようで
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
いかに大切にしていても、過日このあいだから水もらずに我肌わがはだに着けていたのであるから、つぼみすでに落ちつくした、葉も已に枯れ尽して、枝も已に折れていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
過日このあいだ頼んだ、河野こうのさんとこへ、そののち廻ってくれないッて言うじゃないか、どうしたの?」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うだい、到頭とうとう降って来たらしいぜ。過日このあいだから催していたんだから、滅多めったに止むまいよ。困ったもんだ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
やにを拭いた紙を寝覚の端へまるめ込んで、手を手巾はんけちでもんで居るその手巾は、過日このあいだの白茶地ではないが、貞之進はそれに妙なことが思い出されて、じっと小歌の顔を看上みあげると
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
ここできめて下さいましょうか。過日このあいだ、病院で掛合いました時のように、久能山で返事しようじゃ困りますよ。ここは久能山なんですから。またと云っちゃ竜爪山りゅうそうざんへでも行かなきゃならない。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
過日このあいだの方はあれから入来いらしって、あの翌晩おひとりで、そう可笑いんだよ玉ちゃんが大変岡惚して、風采ようすのいゝ方ねえ、あら姉さんも、何だね厭に気を廻すよ、だって風采が好って
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
「さあ。」と、巡査は考えて、「何だか知らんが時々に光るのです。けれども、光線の工合で見える時もあり、見えない時もあるのです。私も過日このあいだから不思議に思っているのですが……。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
過日このあいだの晩、半九郎は途中で源三郎に約束して、あしたはきっと兄を帰してやると言ったが、市之助は花菱に酔い潰れて帰らなかった。その以来、源三郎はいよいよ半九郎を信用しなくなった。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ことに過日このあいだの鶯の話を聴かされてから、彼は半九郎のあまり正直過ぎるのを懸念するようになったので、ゆうべも彼を誘わずに自分一人で来ていると、あとから半九郎が丁度来合せたのである。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これが過日このあいだから源三郎の胸に畳まっていた不平であった。現に兄は昨夜も戻らない。きょうも戻らない、出発まぎわにあってもまだめどもなしに遊び歩いている兄の放埒には源三郎も呆れ果てた。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)