蹴開けひら)” の例文
雨戸を一枚蹴開けひらいて、其儘朧銀おぼろぎんの夜の庭へ、怪鳥の如く飛降りるのを待つてましたとばかり、下から無手むずと飛付いたものがあります。
与八が大きな声で叫ぶと、その声は外なるあやしの男よりも、家の中の大一座を驚かして、障子を蹴開けひらいて廊下へ走り出でます。
あいへだての襖が一斉に、どちらからともなく蹴開けひらかれて、敷居越しに白刃しらはが入り乱れ、遂には二つの大広間をブッ通した大殺陣が展開されて行った。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いろいろな事をして騒ぎ廻ったりした一切の音声おんじょうも、それから馬が鳴き牛がえ、車ががたつき、滊車が轟き、滊船が浪を蹴開けひらく一切の音声も、板の間へ一本の針が落ちたかすかな音も
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
つい、近ごろにアインシュタインが突然第二の扉を蹴開けひらいてそこに玲瓏れいろうたる幾何学的宇宙の宮殿を発見した。しかし第一の扉を通過しないで第二の扉に達し得られたかどうかは疑問である。
案内者 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
一方の扉を蹴開けひらいて、反対側へ飛降りようとした。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)