起居ききょ)” の例文
この頃ではこの議を随分ずいぶん自分から提唱ていしょうして、乱れぬ程度でこの女のみにいられた苛酷かこく起居ききょから解放されて居るには居ます。思い出しました。
女性の不平とよろこび (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
何でも学位論文を書いているという評判だった。彼は父の軍医と一緒に兵営の中で起居ききょして、もう三十になるのに自分のお金が一文いちもんも無いのであった。
衣食、起居ききょの物、不自由が無さ過ぎるのだ。余りに不勝手であった生活から、一足跳びにである。その為にかえって、体のぐあいが悪い気持すらする。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この陣中にとどまって、吾らと起居ききょをなさるとも、または木曽家へ行かれるともお心まかせでござります。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
葛巻の起居ききょしていた二階八畳の青い絨毯じゅうたんなど特に僕ののろったもので、あの絨毯の陰気な色を考えると、方向を変えて、ほかの所へ行きたくなってしまったものだ。
青い絨毯 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
起居ききょ振舞ふるまいのお転婆てんばなりしは言うまでもなく、修業中は髪をいとまだにしき心地ここちせられて、一向ひたぶるに書を読む事を好みければ、十六歳までは髪をりて前部を左右に分け
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
病人は日毎に衰え、すでに起居ききょも不自由であった。しきりに故里の土を恋しがり、また人々をなつかしんだ。その音声も日を経るごとに力なく、附添いの友の嘆きを深くさせるのみだった。
閑山 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)