赤棟蛇やまかがし)” の例文
鼻筋鋭く、頬は白澄しろずむ、黒髪は兜巾ときんに乱れて、生競はえきそった茸の、のほのほと並んだのに、打振うちふるうその数珠は、空に赤棟蛇やまかがしの飛ぶがごとくひらめいた。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
甲の方は相当に綺麗だが、たなごころの中に、薄赤い連銭模様があり、それが赤棟蛇やまかがしの脇腹のように、腕の上にまで延びていた。彼はその手を投げ出すようにした。
指と指環 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
ときどき地もぐりや赤棟蛇やまかがしが、その鬱陶しい枝々をつたわって、楽屋の破れ畳の上へ落っこちた。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
赤棟蛇やまかがしの首をもたげた時のようである。黒い髪に陽炎かげろうを砕く。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
赤棟蛇やまかがしと言うだね、燃える炎のような蛇のうろこへ、馬乗りに乗って、谷底からけて来ると、蜘蛛も光れば蛇も光る。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)