貯蓄たくわえ)” の例文
役所はめられ、眼はとうとう片方が見えなくなり片方は少し見えても物の役には立たず、そのうち少しの貯蓄たくわえはなくなってしまいました。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
僅少わずか貯蓄たくわえで夫妻が冷たくなろうとは思われる理由がない。老妓の推測は自分だけの心にしかわからなかったのであろう。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
俺も少しばかりの貯蓄たくわえをすっかりつかい果して、竹刀削りの内職で命をつなぐような目に逢っているが、一年ばかりの間さんざん面白い思いをしたから、あの女を
それでも幾らか貯蓄たくわえもあり、年金も貰えるので、小体こていに暮らしてゆけば別に困るという程でもありませんでしたが、これから無職で暮らして行こうとするには
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
空気は前に空気孔を発見したので、二月間は支える事を得るが食料は一月足らずしか貯蓄たくわえがないのだから、どうしてもそれまでにはこの飛行器を修繕しなければならないのだ。
月世界跋渉記 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
旧里静岡に蟄居ちっきょしてしばらくは偸食とうしょくの民となり、すこともなく昨日きのうと送り今日と暮らす内、坐してくらえば山もむなしのことわざれず、次第々々に貯蓄たくわえの手薄になるところから足掻あがき出したが
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
父親が敵持だったことは夢にも知らず、ただ、武家が嫌になった父親が、かなりの貯蓄たくわえを町人に廻し、結構な利分を見て楽々と暮しているということを知っているだけです。
中国の大藩の浪人者で相当の貯蓄たくわえを持っているらしく、手習いを教えるでもなく、剣術を指南するでもなく、碁と、謡曲と、学問にって、心静かに日を送っている、梶四郎兵衛の娘おゆうの美しさは