貞操みさお)” の例文
お吉さんの貞操みさおただしいことや、亭主に尽しなさる行いは、この近郷で、誰だって、感心なものだといっていねえ衆はねえんだぜ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よくまア貞操みさおを立て通したものだ! ……そのため俺はどんなに怒り、どんなに苦しみ苦しんだことか! ……しかし今になって考えてみれば
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
姿なりの拵えが野暮でござえます、お屋敷さんで殿様が逝去おかくれになって仕舞ったので、何でも許嫁いいなずけの殿様が戦争いくさ討死うちじにをして、それから貞操みさおを立てるに髪を切ろうと云うのを
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
じゃが、病人は、ただそれのみを、末期まつごまで、嫉妬しっとに嫉妬して、われの貞操みさおを責め抜いたに、お冬も泣かされれば、尼かて、われの身になって見て、いとしゅうてならなんだ。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
余の位置は可憐の婦女子がその頼みに頼みし良人おっと貞操みさおを立てんがためしきりに良人を頌揚ほめあげたるのちある差少の誤解よりこの最愛の良人に離縁されし時のごとく、あめしたには身を隠すに家なく
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
「左門様が、あなた様のお父様の敵などとは夢にも知らず、先刻さきほどから、紙帳の中で、物語りいたしましたは真実ではござりまするが、何んの貞操みさおを!」
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「……そうか。さぞ口惜しかったろう。しかも良人おっとのわしにそれほどまで、貞操みさおをたてていてくれたのか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
司馬又助に女の命、貞操みさおをあやうく奪われようとした。それを九十郎に助けられた。その九十郎は親の敵、兄の敵でもあるらしく、自分を苦しめた敵でもある。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……けれど貞操みさおというものは体のものでしょうか。心のものでしょうか。体の上だけは清女でも、心がみだらな女だったら、それはもうきれいな処女おとめとはいえないのではありませんか。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)