ぼう)” の例文
すべて尊氏のぼうだったのだ。じっくり見直してみなければならない。鎌倉在住のころも、這奴しゃつはただの“ぶらり駒”ではなかったのだ。
あわせて呂蒙は、自分の仮病は敵方に対する当面の一ぼうに過ぎない旨を語って、主君に心をわずらわせたことを詫びた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やつの薄あばたの一ト粒一ト粒から爪のさきまでがぼうの結晶で出来あがっている人間と見なしていいほどである。
つぶうるしのよろいを着、虎御前とらごぜの大太刀を横たえて、三軍のうちに軍師として在る日は、一ぼうに千兵をとらえ、一策に百軍を捕捉ほそくして、これに殲滅せんめつを加えてすらなお
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戦でなら負けはしないが——ぼうにかけては寸毫すんごうの油断もならぬ尊氏、義貞一生の強敵と心がくべきだ。さもなければ、鎌倉終末の大失敗を、ふたたび都でもかさねるだろう。謀だ。
いくさにかけぼうにかけ、始終、あの一禅門には抗しえぬ威圧感と翻弄ほんろうの受け身におかれていた。何よりもその親房には、学識と思想があり、武力に理論づけ、武士を思想の下に統御していた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)