談話はな)” の例文
清三のへやは中庭の庭樹ていじゅを隔てて、庫裡の座敷に対していたので、客と主僧との談話はなしているさまがあきらかに見えた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
お父さんはお昼に神保じんぼうさんをお招き申した。何でも何とか町の地所を此人このひとに買わせるんだって、お母さんと談話はなしていた。今日は料理人が馬鹿に意地が悪い。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「さ、ここへ入れ。」とかたわらに座をたまい、「婦人方の席へおれ一人孤城落日という処じゃ。や、何方どなた沸切にえきらぬ堅い談話はなしはまたの日するとして面白く談話はなそうではないか。なあ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平田が談話はなすことが出来るものか。お前さんの性質きしょうも、私はよく知ッている。それだから、お前さんが得心した上で、平田を故郷くに出発たたせたいと、こうして平田を引ッ張ッて来るくらいだ。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
まだ炎熱あついので甲乙ふたりは閉口しながら渓流たにがわに沿うた道を上流うえの方へのぼると、右側の箱根細工を売る店先に一人の男が往来を背にして腰をかけ、品物を手にして店の女主人の談話はなしているのを見た。
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)