証跡しょうせき)” の例文
旧字:證跡
「あれは証跡しょうせきが天下に発表されてしまったんだから今更匿すにも及ばなかろう。団君、あの事件はいつの花の日会だったかね?」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「さあ、そこまで考えているわけじゃないが、とにかくこの人造人間の右の拳には博士の顔を粉砕したかもしれない証跡しょうせきが歴然と残っている」
人造人間事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
最初にあの家を出る時は、証跡しょうせきの誰にもわからないくらいでしたから、当然こんなに火を背負って出て来たはずはない。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
このほか同じような売春婦殺しがその間にはさまっているのだが、子宮の紛失、陰部を斬り取られていること、臓物ぞうもつもてあそんで変態的にふけった証跡しょうせきなど、体の惨状と犯行の手段
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
いやまたからの車は一輪で用を弁ずるがごとく、右は失っても左さえあれば、一個をもって二個の役を果すべき証跡しょうせきを二人からさまざまに申上げ、御親類一同も御納得になったことであったが
玉取物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
日本では応仁の乱後、世上が極度の窮乏と動揺の底に沈んでいた際に、弥勒の信仰が突如として目さめてきたらしく、弥勒二年という私年号が、ひろく東国の各地に使用せられていた証跡しょうせきがある。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)