覆没ふくぼつ)” の例文
弘安四年に日本に襲来した蒙古もうこの軍船が折からの颱風のために覆没ふくぼつしてそのために国難を免れたのはあまりに有名な話である。
颱風雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
暁もまたず、大小の捕盗船はことごとく覆没ふくぼつし、あわれむべし、この夜助かった捕兵といったら、そも、幾人あったろう。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのぜにを一手に引受ひきうけ海外の市場に輸出しおおいもうけんとして香港ホンコンに送りしに、陸揚りくあげの際にぜにみたる端船たんせん覆没ふくぼつしてかえって大にそんしたることあり。
さもなくば南半球特有の大颱風ハリケーンによってさすがの海の狼も海底の藻屑と消え果てたものか、もしくば英豪艦隊に負わされし深傷ふかでのためにわずかに覆没ふくぼつを免かれつつも
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
一瞬のまに覆没ふくぼつしてしまったのやら、また助かった船にしても、みな大破してちりぢりにどこかへ吹き流されていた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水雷艇「友鶴ともづる」の覆没ふくぼつの悲惨事を思い出した。
藤棚の陰から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)