要訣ようけつ)” の例文
この有名な句でもこれを「白露江はくろえに横たわり水光すいこう天に接す」というシナ人の文句と比べると俳諧というものの要訣ようけつ明瞭めいりょうに指摘される。
俳諧の本質的概論 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
すべて本来の持ち味をこわさないことが料理の要訣ようけつである。これができれば俯仰ふぎょう天地てんちずるなき料理人であり、これ以上はないともいえる。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
ゆえに、学校を建つるの要訣ようけつは、この得失を折衷せっちゅうして、財を有するものは財をついやし、学識を有するものは才力を尽し、もって世の便利を達するにあり。
とにかくに作者彼らの境涯に入って見ようとすること、是が時代を知る一つの要訣ようけつである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
名器の要訣ようけつが悟れるぞ、すべからく茶家に教われ、茶道精神が解せるぞ……と吹き込んで、それがどうなるものと松永さんは思っておられるのであろう。
現代茶人批判 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
こんな空想はどうでもよい事にして、平凡な実際問題として見た時にも、数学の学習と語学の学習とは方法の上でかなり似通にかよった要訣ようけつがあるようである。
数学と語学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そうして書店の陳列棚ちんれつだなに「ゴルフの要訣ようけつ、梅本鶴吉著」という本があったとすると、十人が九人まで「本」を「木」と読んでその本を買って来るであろう。
錯覚数題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「にて」はこの場合総合の過程を読者に譲ることによって俳諧の要訣ようけつつくしているであろう。
俳諧の本質的概論 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
肝心の要訣ようけつがぼかしてある場合が多いのは著者の故意か不親切かひとり合点かわからない。芸術家も同様に科学者も自分のしていることの妙所を認識できないためかもしれない。
錯覚数題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
これが映画の要訣ようけつであると同時にまた俳諧の要訣でなければならない。
俳諧の本質的概論 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
要するにこれらのモンタージュの要訣ようけつは、二つの心像の識閾しきいきの下に隠れた潜在意識的な領域の触接作用によってそこに二つのものの「化合物」にも比較さるべき新しいものを生ずるということである。
映画芸術 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)