被入いらし)” の例文
「叔母さん、すこし吾家うちも片付きました。ちと何卒どうぞ被入いらしって下さい。経師屋きょうじやを頼みまして、二階から階下したまですっかり張らせました」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「雨の糸は、われを今、十年の昔に………なんなの、これが小説なの。勉強して被入いらしつたんでせう。すみませんでしたね。」
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
「あなた、あの時限ときぎ被入いらしって下さらないのね。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「たしか、橋本の番頭さんが薬をしょって吾家うち被入いらしって、あの時豊世さんのお嫁さんに被入いらしったことを伺いましたっけ」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ええ」と正太は受けて、「叔母さんも御淋おさびしく成りましたろうから、ちと御話に被入いらしって下さい。今度は三吉叔父さんと同じ川の並びへ移りました」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「叔父さん、一寸被入いらしつて下さいませんか。あねさんが奈様どうかしましたから。」
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
一枚も持たず……晴衣よそいきに着る物でも、帯でも、箪笥たんすでも、皆なこゝへ来てから自分で丹精した物ばかりなんですよ……まあ、御主人様の御蔭で、斯うして人様が被入いらしつて下すつても恥しくない迄に
死の床 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)