おも)” の例文
そういうと、その男は、机の抽斗ひきだしから名刺を出して、その裏に、すらすらと処方を書いてくれた。受取っておもてをかえして見ると、そこには「医師、春日行彦かすがゆきひこ」とあった。
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
外套のえりを三寸ばかりと返したら、左のそでがするりと抜けた、右の袖を抜くとき、えりのあたりをつまんだと思ったら、裏をおもてに、外套ははや畳まれて、椅子いす背中せなかを早くも隠した。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)