表書うわがき)” の例文
少し学者風でその表書うわがきに何々様下執事かしつじと書いてやったらおおいしかられ、下執事とは何の事だ、御取次衆おとりつぎしゅうしたためて来いといって、手紙を突返つきかえして来た。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「おや、おとうさまのお手紙——早くお帰りなさればいいに!」と丸髷まるまげの婦人はさもなつかしげに表書うわがきを打ちかえし見る。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
渡邊祖五郎殿という表書うわがき、只今のように二日目に来るなどという訳にはまいりません。飛脚屋へ出しても十日とおか二十日はつかぐらいずつかゝります。読下よみくだして見ると
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
表書うわがきは単に大森山王、轟九蔵様と書いて、差出人の処書ところがきも日附も何もない上に、消印スタムプがドウ見てもハッキリわからん。一時は良かったが近頃の郵便局の仕事はドウモ粗慢でイカンね。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「その表書うわがきの宛名になんと書いてあるか読んでみてもらいたい」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と海禪は硯箱をとって半治の身性みじょうを書いて、これ/\と紹介状ひきつけじょうしたゝめ、表書うわがきをいたしまして
その表書うわがきすなわちエッヂンボルフ王子のきよめと云う可笑しな不思議な文字をかいて、中の文句はドウかと云うに、この日本は真実、自尊自大の一小鎖国にして、外国人をば畜生同様に取扱うの常なり
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)