街鉄がいてつ)” の例文
昼飯ひるは相川がおごった。その日は日比谷ひびや公園を散歩しながら久し振でゆっくり話そう、ということにめて、街鉄がいてつの電車で市区改正中の町々を通り過ぎた。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「今日は諸君からひやかされに来たようなものだ。なんぼ田舎者だって——これでも街鉄がいてつを六十株持ってるよ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こう思って暫くたたずんで居ると、やがて吾妻橋の方の暗闇くらやみから、赤い提灯ちょうちんの火が一つ動き出して、がらがらがらと街鉄がいてつき石の上を駛走しそうして来た旧式な相乗りのくるまがぴたりと私の前で止まった。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その後ある人の周旋しゅうせん街鉄がいてつの技手になった。月給は二十五円で、家賃は六円だ。清は玄関げんかん付きの家でなくっても至極満足の様子であったが気の毒な事に今年の二月肺炎はいえんかかって死んでしまった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)