行器ほかい)” の例文
自分のために現れたかと思うものに会って「彼レモマチ、吾レモマチ」と。先日所望の行器ほかいが手に入った。丸々した豊かな形なのだ。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
そうして、ふたのとられた行器ほかいの中には、新鮮な杉菜すぎなに抱かれた鹿や猪の肉の香物こうのものが高々と盛られてあった。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
三ツうろこの大紋打った素襖すおう烏帽子えぼしの奉行の駒を先にして、貝桶、塗長持ぬりながもち御厨子みずし、黒棚、唐櫃からびつ屏風箱びょうぶばこ行器ほかいなど、見物の男女は何度も羨望の溜息をもらしていた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて、数種の行器ほかいが若者の前に運ばれた。その中には、野老ところ蘿蔔すずしろ朱実あけみと粟とがはいっていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
卑弥呼は今はただ反絵の眠入ねいるのを待っていた。反絵は行器ほかいの中から鹿の肉塊をつかみ出すと、それを両手で振り廻してうたを歌った。卑弥呼は彼の手をとって膝の上へ引き寄せた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)