蜆貝しじみがい)” の例文
親の前でこそ蛤貝はまぐりがい反身そっくりかえれ、他人の前では蜆貝しじみがいと縮まるお勢の事ゆえ、さいなまれるのが辛らさにこの女丈夫に取入ッて卑屈を働らく。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
双方共に立派な男だ、ケチビンタな神経衰弱野郎、蜆貝しじみがいのような小さな腹で、少し大きい者に出会うとちっとも容れることの出来ないソンナ手合では無い。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
加波山で猟れた鹿らしく鹿島の猟で採れたあわび新治にいばりの野で猟れた、しぎ、那珂の川でとれたという、蜆貝しじみがい
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
我々凡夫ぼんぷの涙は、蜆貝しじみがいに入れた水ほどのものじゃ、地蔵様の大慈大悲は大海の水よりも、まだまだ広大。
そのしんにはごく少しの綿をまるくして入れ、またよくはずむようにといって、りゅうひげのみどり色のをつつんだり、蜆貝しじみがいに小さな石などをつつみ入れて、かすかな音のするのを喜んだりしていた。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)