蛮人ばんじん)” の例文
旧字:蠻人
これは、そのむかしハワイの王様なんとか一世が、なんとかいう蛮人ばんじん酋長しゅうちょうを、火牛の戦法で、この崖から追い落した。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「はてな、呂宋兵衛は蛮人ばんじんの血をまぜた、紅毛碧瞳こうもうへきどうの男であるはずだが、こりゃ、似ても似つかぬただの野武士のぶしだ、ウーム、さてはおのれ、影武者であったな」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お前は東北だろう。坂上田村麿さかのうえのたむらまろに征伐された方だ。蛮人ばんじんというのはどうだ、強そうでいいぞ」
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
一同が考えた末、それは、蛮人ばんじんに斬取られた彼の弟デックの右手がしゃべっているのに違いないという結論に達した。四五日すると、シャクはまた別の霊の言葉を語り出した。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そうかと云って南洋や亜弗利加アフリカ蛮人ばんじんのような、精悍な活気と体力とがあるのでもない。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
たとえば、海抜かいばつ千メートル以上のアンデス山脈をこえ、昼なお暗い深林を通り、パタゴニアの荒漠こうばくたる草原を横断せねばならない。そのうえに、パタゴニアの蛮人ばんじんどもは、諸君を歓迎かんげいはしまい
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
蛮人ばんじんと、偽善者と
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ピリ、ピリ、と、彼の女が呼子よぶこを吹くと、三人のニグロが其処そこへやって来て、見物席へお辞儀じぎをした。くちびる毒草どくそうの花のようにあかい、煙草たばこの葉のような皮膚の色を持った、恐ろしく背の高い蛮人ばんじんである。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)