虞氏ぐし)” の例文
漢の高祖との戦に破れた項羽こううが、虞氏ぐしとの別れの切なさを歌ったものだが、今日の重衡の心境そのままをいいあらわしてまことにみごとであった。
「知っておけ。義貞、この女はぞっこん好きで好きでならぬが、さりとていくさを怠るものではない。そちまでがわしを虞氏ぐしに溺れた項羽こううのごとき愚将と見るな」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四面楚歌声と誰かゞ落書したのが目に這入り楚歌の歌の字がことに大きく見えて、何とも知れず頭に響く者があると同時に、その柱が芸子髷に花笄はなこうがいを挿し、それが小歌のようで虞氏ぐしのようで
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
にべもなく、虞氏ぐしなんだしりぞけて
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
帳裡ちょうりしょくは、ほの暗く、楚王そおう虞氏ぐしの恨みもしのばれた。時鳥ほととぎすは明け近きを告げていた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ともしびくろうしては、数行すうこう虞氏ぐしが涙、夜深うしては、四面楚歌しめんそかの声
虞氏ぐし楚王そおう
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)