薬師堂やくしどう)” の例文
今の音羽おとわ護国寺ごこくじの境内にあったもので、一万八千坪のうちに有名な薬師堂やくしどう神農堂しんのうどうをはじめ、将軍臨場の時のために、高田御殿という壮麗なる御殿まで出来ていました。
裏門の方へ出ようとするかたわらに、寺のくりやがあって、其処そこで巡覧券を出すのを、車夫わかいしゅが取次いでくれる。巡覧すべきは、はじめ薬師堂やくしどう、次の宝物庫ほうもつこ、さて金色堂こんじきどう、いわゆる光堂ひかりどう
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時には荒くれたいのししが人家の並ぶ街道にまで飛び出す。塩沢というところから出て来た猪は、宿しゅくはずれの陣場から薬師堂やくしどうの前を通り、それから村の舞台の方をあばれ回って、馬場へ突進したことがある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
小児こどもせめて仏のそですがろうと思ったでしょう。小立野こだつのと言うは場末ばすえです。先ず小さな山くらいはある高台、草の茂った空地沢山あきちだくさんな、人通りのないところを、その薬師堂やくしどうへ参ったですが。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)