薄野呂うすのろ)” の例文
れッてえな、武大さんときたら。だから世間でいうんだよ。はなッ垂らしの薄野呂うすのろだッて。——見ねえな、おらの顔や手頸てくびを」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
薄野呂うすのろか何ぞのような眠たげな顔をして、いつ話のはずむと云うこともない小野田と親しくなるにつれて、不思議な意地と愛着あいじゃくとがお島に起って来た。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
どっから刈りこんでいいか、ぼくは無茶苦茶に足の向いた所から分け入り、歩けた所だけ歩いて、報告する——てやがんだい。ぼくは薄野呂うすのろです。そんなんじゃあない。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ふん、唐変木とうへんぼくの、薄野呂うすのろのこいつ等だって、馬鹿にすりゃあ、とんだ目を見るものさ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
かくてその薄野呂うすのろな人々は、国王や英雄らの室内劇をやっていた。
ヤイ薄野呂うすのろ! 間抜け野郎! そんな方へ行くと溺れるぞ! そっちは淵だ! 深い淵だ! ヤイヤイ小僧どこへ行くんだ! そんな方へ行くとつまずくぞ! そこには大きな岩があるんだ! 何んというこいつは馬鹿なんだろう! 真っ直ぐに行きな真っ直ぐに。
「さては、彼奴きゃつよな。日頃からの薄野呂うすのろ、何がと、油断していたのが、誤りじゃった。おのれ、今にみよ」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひげなんかはやして、あんなものにでれでれしているなんて、お前さんも余程よっぽど薄野呂うすのろだね」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「だって旦那、人もあろうに、あれが饅頭まんじゅう売りの武大ぶだッていう薄野呂うすのろのおかみさんじゃござんせぬか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お庄が朝目をさますと、薄野呂うすのろのようなその按摩は、じっと坐ったきりまだ機械的に疲れた手を動かしていた。明け方から眠ったらしい叔母の蒼白い顔に、蚊帳の影が涼しくそよいでいた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「おふざけでない。やっとこ喰べるがせきの山の饅頭売りのくせにしてさ。こんな甲斐性かいしょうなしの亭主ってあるかしら。ちッ、薄野呂うすのろの、おんぼろ宿六、勝手におしッ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ば、ばかなことを申せ。あんな、薄野呂うすのろな唖聾を隠したって何になるか」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああ、せいせいするよ。あんな、薄野呂うすのろがいなくなって」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)