薄端うすばた)” の例文
それから見れば別に不似合でもなく、畳敷きの上手の半間の置床には、青銅の薄端うすばたに水仙の花の一茎がすっきりと活けてある。
変る (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
顔にうすく白粉などを塗って、髪も綺麗にでつけ、神棚にさかきをあげたり、座敷の薄端うすばた花活はないけに花を活けかえなどした。お庄はそんな手伝いをしながら、昼ごろまでずるずるにいた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
薄端うすばたへ揷けた馬蘭に埃が白くたまっていたのがはっきりと印象に残っている。
復活祭 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
沢崎は席に就く前に、薄端うすばた未生みしょう流らしいめ方をした葉蘭はらんけてある床の間を向いてひざまずき、掛軸の書を丹念に打ち眺めている様子であったが、幸子と雪子とはそのすきに彼の後姿へ眼をった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)