ひろが)” の例文
此の死は、あまりにひろがりすぎる生物を減らして、生物の間の調和をよくし、そして又、すべての生物を、絶えず若くしてゆく。
其が次第にひろがつて、過ぎた日の様々な姿を、聯想の紐に貫いて行く。さうして明るい意思が、彼の人の死枯しにがれたからだに、再び立ち直つて来た。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
彼は、たった今、もりもりと盛り上って来て、胸一ぱいにひろがりはじめた想念を、もっとハッキリ追って見ようとして、ふたたび、暗い小路に戻って、ゆきつもどりつしはじめた。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
友人辻本工学士に拠ると信濃越中の国境に聳えている祖父じいヶ岳は、「種蒔き爺さん」がざるを持った具合に現われるので、山腹雪解の頃、偃松はいまつが先ずその形にひろがって、出るのではないかという話である
雪の白峰 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
其が次第にひろがって、過ぎた日の様々な姿を、短い聯想れんそうひもに貫いて行く。そうして明るい意思が、彼の人の死枯しにがれたからだに、ふたたび立ち直って来た。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
どうだい? 放つておけば、一寸の間に世界中にひろがるかもしれない此の木虱を、あの金色の眼の蜻蛉や、小さい瓢虫や、いろんな雛鳥が食ひ尽してしまへようか。