蓬々おどろおどろ)” の例文
……以来、打続いた風ッ吹きで、銀杏のこずえ大童おおわらわに乱れて蓬々おどろおどろしかった、その今夜は、霞に夕化粧で薄あかりにすらりと立つ。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その行燈の枕許まくらもとに、有ろう? 朱羅宇しゅらお長煙管ながぎせるが、蛇になって動きそうに、蓬々おどろおどろと、曠野あれの徜徉さまよう夜の気勢けはい。地蔵堂に釣った紙帳より、かえってわびしき草のねやかな。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……その森、その樹立こだちは、……春雨のけぶるとばかり見る目には、三ツ五ツ縦に並べた薄紫の眉刷毛まゆばけであろう。死のうとした身の、その時を思えば、それもさかしまに生えた蓬々おどろおどろひげである。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
も一つきのこで、名も知らぬ、可恐おそろしい、故郷ふるさとの峰谷の、蓬々おどろおどろしい名の無いくさびらも、皮づつみのあんころ餅ぼたぼたとこぼすがごとく、たもとに襟にあふれさして、山野の珍味にかせたまえる殿様が
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)