とむ)” の例文
年も丁度七十歳に達したので、前年んで知り合ひの西福寺の和尚おしょうに頼んで生きとむらひを出してもらひ、墓も用意してしまつた。
上田秋成の晩年 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
とむらいなど真似ごとというにもひどいものだったのに、それが更に三両なにがしという借分になって証文に書き込まれた。
初蕾 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一勇士をとむらわんとて飛行機に乗り、その勇士の眠れる戦場の上空より一束の花を投じても、決してその勇士の骨の埋められたる個所には落下せず
たずねびと (新字新仮名) / 太宰治(著)
「なぜって、亡くなってしまったんですよ。一昨々日さきおとといとむらいも済みましたそうで。」と、答えるほかはなかった。
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
あの船の姿すがたが雲にかくれて見えなくなるときの気持ちが恐ろしくなったのです。わしは何だかあの帆を見ると、とむらいの行列のはたのような気がしてなりません。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
お嬢様たちはいつもわたしたちはあすこが一番好きだから、死んだらあすこへ埋めてもらうのよ! と口癖のようにいってなさっただから、今度警察の許可をもろうて、とむれえ直すことにしただ。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)