葡萄えび)” の例文
それは一つは、葡萄えび色の緒の、穿き減した低い日和下駄を穿いてる爲でもある。肉の緊つた青白い細面の、醜い顏ではないが、少し反齒そつぱなのを隱さうとする樣に薄い脣をすぼめてゐる。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
それが「ろおれんぞ」とむつまじうするさまは、とんと鳩になづむ荒鷲のやうであつたとも申さうか。或は「ればのん」山のひのきに、葡萄えびかづらがまとひついて、花咲いたやうであつたとも申さうず。
奉教人の死 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
葡萄えび色にあかッちゃけて、もう心もち西へ廻った日光が、斜にその上を漂っている、西の方遥かに白峰しらね、赤石、駒ヶ岳、さては飛騨山脈が、プラチナの大鎖を空間に繋いだように、蜿蜒えんえんとして
雪中富士登山記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
暗い坂、のぼり坂、山葡萄えびどろの実がれた。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)