葉巻シガア)” の例文
旧字:葉卷
かうして朝起きるとから、夜分寝床に入るまでその同じ葉巻シガアを啣へ続けてゐる。尤も一度だつて、その葉巻シガアに火をけた事はない。
いでや、事のようを見んとて、慢々ゆらゆら出来いできたれるは富山唯継なり。片手には葉巻シガアなかばくゆりしをつまみ、片臂かたひぢを五紋の単羽織ひとへはおりそでの内に張りて、鼻の下の延びて見ゆるやうのゑみを浮べつつ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
紳士は葉巻シガアを取出した「一つ如何です?」
夜汽車 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
その一本の葉巻シガアを将軍はいつも口にくはへてゐる。食事の時は叮嚀に卓子テーブルの上にそつとそれを置き、食事が済むと、またそれを啣へてゐる。
彼は人々の更互かたみがはりにおのれのかたながむるを見て、その手に形好く葉巻シガアを持たせて、右手めて袖口そでぐちに差入れ、少したゆげに床柱にもたれて、目鏡の下より下界を見遍みわたすらんやうに目配めくばりしてゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「たつた一本の葉巻シガアだつて。戯談ぜうだん言つちやいけない、戦争が始まつてから今日までもう幾年になると思つてるのだい。」
だが、いつの時代でも大学は葉巻シガアの製造所で無いと同じやうに、「真理」の工場でも無いから、ポケツトの葉巻シガアも、「真理」も博士達の手製でない事だけは争へない。
博士は右のポケツトには葉巻シガアを、左のポケツトには「真理」を入れてゐる。