草木瓜くさぼけ)” の例文
午食前ひるめしまえに、夫妻鶴子ピンを連れて田圃に摘草つみくさに出た。田のくろの猫柳が絹毛きぬげかつぎを脱いできいろい花になった。路傍みちばた草木瓜くさぼけつぼみあけにふくれた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
重く垂れていた雲は次第に雲切れがして青空があらわれ、五、六寸も伸びた麦畑の上では雲雀ひばり長閑のどかに囀り、路傍にはすみれ蒲公英たんぽぽ草木瓜くさぼけ、などが咲いて、春は地上に遍かった。
春の大方山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
芝崖に草木瓜くさぼけ赤き日おもての水之尾道は行きつつかな
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
東京は桜の盛、車も通れぬ程の人出だった、と麹町まで下肥しもごえひきに往った音吉の話。村には桜は少いが、それでも桃が咲く、すももが咲く。野はすみれ、たんぽゝ、春竜胆はるりんどう草木瓜くさぼけあざみが咲き乱るゝ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
春浅き山田のくろ草木瓜くさぼけは刺は繁けど地面より咲く
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)