茶瓶ちゃびん)” の例文
メダカが餌にありついたように、無数の雲助は寄りたかって、ハゲ茶瓶ちゃびんを振り立てつつ馬方蕎麦をむさぼり食っている。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こういう茶を一びんこしらえますには三十八銭ぐらいかかるのでございます。その一罎というのはちょうど日本の溲瓶しゅびんの形になって居る土焼の茶瓶ちゃびん一つを言うのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
うっかり、下ろし忘れた茶瓶ちゃびんのふたが、かたかたと、おどった。そっと、火鉢から下ろして
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼はまた湯鑵に新しく水を入れて来て火鉢の火を盛んにした。湯の沸く間に、彼は彼の唯一の愛玩あいがん品の南蛮なんばん製の茶瓶ちゃびんひざに取上げて畸形きけいの両手で花にでも触れるやうに、そつとでた。
上田秋成の晩年 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
茶瓶ちゃびんか何かそこへ置きやがったな。オヤオヤ。お尻がビショビショになっちゃったね。アッハハ。茶粕ちゃかすが付いてらあ。仕方がない。この鉄椅子に掛け給え。そのうちに乾くだろう。……見たまえ。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「でも——」と甚助は茶瓶ちゃびんを持って立ちあがって、そして叫んだ。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)