苦悩くのう)” の例文
旧字:苦惱
次郎は、期間の半ばを過ぎるまで、先生の顔にも、しばしば苦悩くのうの色が浮かぶのを見てとって、自分も心を暗くすることがあった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
あなたのぬすみ見た横顔は、苦悩くのう疲労ひろうのあとが、ありありとしていて、いかにもみにくく、ぼくは眼をふさぎたい想いでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
さらにまた諧謔かいぎゃくにあふれたもの、あるいは苦悩くのうにみちたものもあり、人生の一断面のスケッチもある。小さい本ながら、まことにりだくさんである。
絵のない絵本:02 解説 (新字新仮名) / 矢崎源九郎(著)
さらにまた諧謔かいぎゃくにあふれたもの、あるいは苦悩くのうにみちたものもあり、人生の一断面のスケッチもある。小さい本ながら、まことにりだくさんである。
かれは富士男の苦悩くのうは十分に推察すいさつした、けれど、責任者の地位にあるふたりが、しずんだ顔色を一同に見せては、連盟の士気がいよいよ沮喪そそうしてしまう。その結果は重大である。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
天狗道てんぐどうにも三熱の苦悩くのう、髪が乱れ、色が蒼ざめ、胸がせて手足が細れば、谷川を浴びるともとの通り、それこそ水が垂るばかり、招けばきたうおも来る、にらめば美しいも落つる
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それは、はた目には苦悩くのうの連続ともいうべきものであった。しかも、それでいて二人の気分はいつもみきっており、あせりがなく、あたたかでほがらかだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
苦悩くのうは大切にしまっておきたく、それとはあべこべに、あなたとの楽しかった遊びが、次から次へと、走馬燈そうまとうのようにおもい出され、清さんのそれからの御意見も、いつしか空吹く風と
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
あらゆる苦悩くのうにたえて、そうした呪いに似た気持ちを克服こくふくするのだ、と、そう自分に言いきかせて、自分をはげますことに、あるほこりを感じていないのではない。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)