花札はな)” の例文
一向どうという様子もない。……花札はなを引こうというから六百拳をしているうちに午前二時になった。……さすがに何となく凄いんだな。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
すこし小母が氣分の好い時には、池の金魚の見えるところへ人を集めて、病を慰める爲に花札はなを引いた。
たしかに小包を請取ったので、かくとは思い懸けず、慎みながら、若いから、今も今で、かねていいつけられてたしなんだ、花札はなを引いて、気の衰えるまで負けて帰ったので、済まなさも済まないし
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ヒヒヒヒ……」と笑って、「花札はなよ」と云った。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
花札はなと間違げえちやいけない」
堪忍なさいな、わたいは見向いても下さらないんだと思って、自暴やけよ、お花札はななんか引いてさ、堪忍して下さいな、くッて。おまえさんの深切を無にしたようだけれど、だってしようがないんだもの。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「コヤコヤ、いつかも蝶吉がお花札はなを引いた時のように警察の帳面につけておく。住所、姓名をちゃんと申せ、偽るとためにならぬぞ。コヤ、」と一生懸命にわらいを忍んで、ほっそりした頬を膨らしながら
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)