芭蕉翁ばしょうおう)” の例文
さよう、小名木川おなぎがわの五本松は芭蕉翁ばしょうおうが川上とこの川しもや月の友、と吟じられたほどの絶景ゆえけいたりがたくていたりがたき名木めいぼくでしょう。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その頃はまだ仁王門におうもん藁葺わらぶき屋根で、『ぬれて行く人もをかしや雨のはぎ』と云う芭蕉翁ばしょうおうの名高い句碑が萩の中に残っている、いかにも風雅な所でしたから
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
芭蕉翁ばしょうおうを研究しているK君が「じっとしていて聞く音楽と、動きながら聞く音楽とがある。じっとしていて聞くような音楽はもうなくなってしまいはしないか」
試験管 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
例の牡丹ぼたんの大木だの、亜欧堂のあとだの、芭蕉翁ばしょうおうの旧蹟だのといったようなものを、親切に紹介されて、それから投弓のために白い袋戸へ、山桜ときじを描いて、さて出立という時
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
長野県、西筑摩郡にしちくまごおり神坂村みさかむら——そこが母たちの住んでいたところです。村はずれの新茶屋しんちゃや芭蕉翁ばしょうおうの句塚がありまして、信濃しなの美濃みのの国境にあたることを旅人に教えるところです。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
成り上りのひょろ長町ではなくて、人間同様栄養の好いのは必ず横幅があるという団さんの都会の定義にしっくり合っている。芭蕉翁ばしょうおうの故郷塚を尋ね当てゝ木像に拝面するまでに
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それは芭蕉翁ばしょうおう歌麿うたまろとである。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)