芥子坊主けしぼうず)” の例文
今では、その毒汁で脹らんだ芥子坊主けしぼうずを切りさへすれば、望み通りに茶色の涙のやうなものがぼろぼろと滴り落ちて来る。……
鴉片 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
どこまで始末にえねえかすうが知れねえ。いや、地尻の番太と手前てめえとは、おら芥子坊主けしぼうずの時分から居てつきの厄介者だ。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そりやア知れたことぢやが、なア。」氷峰は例の芥子坊主けしぼうずの樣な、そしてまた竹の筒の樣な顏に苦笑ひをしながら
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
事務室とも、小使室ともいうべき板張りの床、同じように机、腰掛で蝋燭ろうそくの火に向い、しきりに書を読んでいる少年。それは頭を芥子坊主けしぼうずにして支那服を着ている。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そいつは頭をくりくりの芥子坊主けしぼうずにしてね、着物だってそでの広い支那服だろう、くつもはいてるねえ、大へんかあいらしいんだよ、一番はじめの日僕がそこを通ったらう言っていた。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
髮を分けてもないのが芥子坊主けしぼうずの樣に見えるあたまをくるりと一つまはして、ぬツと義雄の方へ顏を向け、「北海道人はこれがただ習慣の樣になつてをるのぢや。」
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
芥子坊主けしぼうずの前髪を落して、養子の方で、小普請支配石川右近将監いしかわうこんしょうげんと、組頭の小屋大七郎に、初めて判元はんもとの時に会ったが、その時は小吉といったが、かしらが『歳は幾つ、名は何という』と聞きおった故