膨大ぼうだい)” の例文
兵粮は嫌でも他から仰がなければならぬのであるから、大概たいがいの者は頭と腕だけが膨大ぼうだいになつて、胃の腑が萎縮ゐしゆくする。從つて顏の色がくすむ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
経済は膨大ぼうだいになってゆく。君侯への心くばりから、使者の往来といったような社交。良人の身まわりもまるで違ってきた。
日本名婦伝:太閤夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてそのふくろの中にしるを含んだ膨大ぼうだいせる毛と種子とがあって、その毛はそのふくろの外方の壁面へきめんから生じており、その種子は内方の底から生じている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
去年の秋手賀沼てがぬままでドライヴしたついでに大利根おおとねの新橋まで行ってみた。利根川の河幅はこの橋の上流の所で著しく膨大ぼうだいして幅二キロメートル半ほどの沼地になっている。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それは、その蔭にある、無数の庶民が、きょうを生きるために描き出している膨大ぼうだい生命いのちの絵図とも見えるのである。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然るに父の慾望は一年々々に膨大ぼうだいとなツて、其の後不圖ふと事業熱じげふねつに取ツ付かれた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
なにしろ、清盛と神戸の関係、また遺蹟などといったら、余りに膨大ぼうだいで、旅すがらの、片手間にはゆかない。地理的な概念をつかめれば望外というもの。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで関羽は、糜竺びじく簡雍かんようなどと協力して、この膨大ぼうだいなる大家族を、次々に舟へ盛り上げては対岸へ渡した。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遥かに宮津七万石の城主大名たる京極の内容のない膨大ぼうだい蔑視べっししていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)