胸元むねもと)” の例文
……もうあと十分だぞ、やって来るかなあ、と、彼は考えながら無意識に胸元むねもとに眼をやった。絹大島きぬおおしま羽織はおりけた茶の平紐ひらひもの右の附け根に結びつけた赤いリボンが花のように見えた。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
見るとひとしく挨拶あいさつもせざる中に長八に獅齒付しがみつき胸元むねもととつ捻居々々ねぢすゑ/\こゝな市之丞殿の恩知らず御前の置て行たる金ゆゑ夫文右衞門は盜賊のうたがかゝりて召捕めしとられ入牢となりし無實の災難夫になんぞや去暮中御奉行所へ紙屑買を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)