翰墨かんぼく)” の例文
「往昔十四五、出デテ遊ブ翰墨かんぼく場、斯文崔魏しぶんさいぎノ徒、我ヲ以テ班揚ニ比ス、七齡思ヒ即チ壮、九齡大字ヲ書シ、作有ツテ一のうニ満ツ」
岷山の隠士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
翰墨かんぼくを楽しむというのではない、実用向きに使用して、この男がかりにも著作をする気になった動機というものがまた不審ではあるが
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
玄徳は、思いつめて、騎の鞍をおろし、その鞍に結びつけてある旅具の中から、翰墨かんぼくと筆を取りだして、母へ便りを書きはじめた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翰墨かんぼくの書は空海くうかい道風とうふうを去ること遠からず、佐理さりを四五年前に失ったばかりの時代の人であったのである。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
をさなきより身を一一五翰墨かんぼくするといへども、国に忠義の聞えなく、家に孝信をつくすことあたはず、一一六いたづらに天地のあひだにうまるるのみ。兄長このかみ赤穴は一生を信義の為に終る。
毎月一回、青楓氏の仮寓かぐうに集って翰墨かんぼくの遊びをするようになった。
御萩と七種粥 (新字新仮名) / 河上肇(著)
不肖孔明もまた、区々たる筆硯のあいだに、白を論じ黒を評し、無用の翰墨かんぼくと貴重の日を費やすようなことは、その任でない
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
王城内で一つの書き物を見ている——兵馬倥偬へいばこうそうかんに、ともかく墨のついたものに一心に見惚れているくらいだから、この甲士の眼には、多少翰墨かんぼくの修養があったものに相違ない。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
山野を馳駆ちくして快い汗をかくか、天潤いて雨静かな日は明窓浄几じょうき香炉詩巻、吟詠ぎんえい翰墨かんぼくの遊びをして性情を頤養いようするとかいう風に、心ゆくばかり自由安適な生活を楽んでいたことだったろう。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)