羽風はかぜ)” の例文
巽小文治たつみこぶんじはふたたびやりをとりなおして、あおむけざまに、ヤッと突きあげたが、鷲の羽風はかぜにふき倒され、さらにいっぽうの龍太郎りゅうたろう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はっと仰ぐと、アイヌ部落の、そのややうち開けた谿谷の上、海に迫った丘陵の椴松の黒い疎林の、その真っ蒼な空に一点、颯爽と羽風はかぜを切っているのは
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
その度毎に野分のわけの大風が吹き出されるような響を聞くと、お雪ちゃんは、どうしても、さきのあの大鷲がこの山へ舞い戻って、その羽風はかぜがこうしてあおるのだと思われてなりません。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
驚きたって飛び去りし羽風はかぜに、黄なる桜の一葉ばらりと散りぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
啼いて羽風はかぜもたのもしく
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
たッたひとり、いまの羽風はかぜにもたおされずに、鷲のそばにっ立ったまま、ジッとうでぐみをしている少年。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああ、あの蝶の羽風はかぜが……」
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いて羽風はかぜもたのもしく
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
しかし、竹童の声ぐらいは、竹童じしんが乗っている鷲の羽風はかぜしとばされてしまった。そのかわり、人ではないが、はるかな地上にあたって、馬のいななくのが高く聞えた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)