羽振はぶり)” の例文
才気と羽振はぶりにまかせて、随分あぶない利得をうかがったり、気は弱いくせに、傲岸ごうがんに人を見たり、世間をもてあそたちの良人を、程よく締めて来た内助だった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
國「新参者のくせに、殿様のお気に入りだものだから、此の節では増長して大層お羽振はぶりいよ、奥向を守るのはわたしの役だ、部屋へ帰って寝てお仕舞い」
町は一丁目から五丁目までありますが、二丁目から三丁目までに青楼せいろうがあり、大きな二階三階が立ち並んでいて、土地で羽振はぶりのよいのはその青楼の主人たちです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
かつ、文人の集まる席へ案内されても滅多に顔を出さなかった。尾崎と一緒に下宿して一つ鍋のものを突ッついた仲でありながら、文壇の羽振はぶりくなると忽ち裏切してしまった。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
その頃羽振はぶりをきかせてゐた堺衆の一人が催しの茶会に招かれて往つたことがあつた。
かけり翔る夕焼つばめ幾羽いくはつばめ羽振はぶりはやけば裂尾さきをのみ見ゆ
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
城内で羽振はぶりのきく若公卿に取り入ろうと胸算むなざんをとったが、それもあまり支配者を出しぬく形になるので、とにかく蒼惶そうこうとして起き抜けに代官屋敷へやってきたわけ。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奥様のないうちのお妾なればお羽振はぶりもずんとよろしい。
お武家様にしてみれば、江戸はなおさら羽振はぶりのいい土地。同じ編笠をかぶるにしても、刀の差しよう、まげい方まで、どこか違っておりますので、見る目もなんとなく頼もしゅうございます。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)