羽折はおり)” の例文
客は五十五、六だろう、結城紬ゆうきつむぎの袷に羽折はおり紺献上こんけんじょうの博多の帯をしめて、白なめしの革の緒をすげた麻裏をはいていた。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
やがて眠った赤子を、並べて敷いた小さな夜具に寝かせると、彼女は寝衣ねまきえりを合わせながら起きあがり、衣桁いこうから羽折はおりを取ってはおり、夜具の上に戻ってきちんと坐った。
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
庄兵衛は寝衣ねまきの上へ羽折はおりをひっかけ、襖をあけて居間から縁側へ出ると、端の雨戸をそっと辷らせた。外は雪で、庭の木も石燈籠いしどうろうもまっ白におおわれ、なおはげしく降っていた。
十八条乙 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
藍染あいぞめ単衣ひとえを着、そのうえに派手な、たづな染の羽折はおりを重ねていたが、……絹張りの行燈あんどんの光りに照らしだされたその姿は、下町ふうのいきにくだけた感じで、孝之助はちょっと戸惑いをした。
竹柏記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
二人は千筋せんすじの手織り木綿の袷に双子縞の羽折はおり、小倉の角帯をしめ、麻裏あさうら草履をはいていた。ちょうど黄昏たそがれどきで、人の往来の多い小舟町の通りを東のほうへ、かくべつ目的もなくあるいていた。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
氷のような視線で、妻の全身を眺めまわし、そして静かに羽折はおりを着た。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)