はじらい)” の例文
復一はさすがに云いよどんだ。すると真佐子は漂渺とした白い顔に少しはじらいをふくんで、両袖りょうそでを掻き合しながら云った。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ぜんたいにやつれているようだし、肩をすぼめるような身ごなしも、はじらいを含んだかなしげな微笑のし方にもかつて見たことのない寂しそうなかげがにじみ出ていた。
彩虹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
おとなの世界をのぞいて見たばかりのようなお民は、いくらかはじらいを含みながら、十七の初島田はつしまだの祝いのおりに妻籠の知人から贈られたという櫛箱くしばこなぞをそこへ取り出して来ておまんに見せた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)