罪咎つみとが)” の例文
その青い倦怠の中からわれ知らず罪咎つみとがの魔神の力をりても生き上ろうとするわが身の内の必死の青春こそ、あなや、危うくあります。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
六三郎はふだんから正直の聞えのある者、殊に父子とはいいながら十年も音信不通で、父の罪咎つみとがに就いてなんの係り合いもないことは判り切っている。
心中浪華の春雨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
……何の罪咎つみとががあるんでしょう、と思うのは、身勝手な、我身ばかりで、神様や仏様の目で、ごらんになったら。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
初登山では御岳でもそうであるがお鉢廻りは許されない、夫れを強いて先達に頼んで特別に許して貰えたのは子供だから罪咎つみとががないという訳だったと思います。
登山談義 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
何の罪咎つみとがもない身に一挺いっちょうの小刀すらも帯びぬ市民たちは、たちまち血煙立ててそこに数百人の死傷者を生じました。その阿鼻叫喚あびきょうかん直中ただなかへ、騎馬兵がさらに砂塵を挙げて吶喊とっかんしてきました。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「それは殺生せっしょうじゃ、釣る魚なら、餌のために心迷いのしたものじゃから、まあまあ好いとして、毒流しは、罪咎つみとがのないものまで、いっしょに根だやしにすることになるから、それは好くないことじゃ」
岩魚の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)