かこ)” の例文
窓からして来ている灰色な光線は、どうかすると暗い部屋の内部なか牢獄ろうごくのように見せた。周囲が冷い石でかこわれていることもその一つである。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
同じく鬱蒼たる橄欖の林にかこまれて、絵のように美しい、石造りの大殿堂がそびえ立っているのに、驚嘆の瞳を向けずにはいられなかったのであった。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
白布をかけた数十のテーブルと、それを取りかこんで坐っているおびただしい娘たち。ざわめき、陽炎かげろうのような話声、笑声、食器のふれ合う音などが空中へ鳴った。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
花にかこまれた玄関には、アカンザス模様を彫刻した幾本かの大理石の円柱がそそり立ち、中へ踏み込めば、そこには大広間の嵌木細工モザイクの床の半ばをおおうて
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
右手一面に橄欖かんらんの林に取りかこまれた墓地の場面なのでありますが、この辺まで読み進んでまいりました時には、もはや、羅馬という観念は疑いをさしはさむ余地もないまでに
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
そして一向に悲哀らしくもない悲哀トリステサかこんで、その恰好に楽しげな笑いを挙げているのであったが、化粧と友人の訪問と観劇と夜会と……それ以外には何のすることとてもない身の上では
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)