締木しめぎ)” の例文
窓縁まどぶちを力に両手でおさえつけている家の中の者と、爪尖つまさき立ちをして締木しめぎにかけられている下の者とは、地の利において大変な相違がある。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それと共に、急いで神尾に取られた手を振り放そうとしましたけれど、それは締木しめぎのように固く握られてありました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
平馬は締木しめぎにかけられたように固くなってしまった。まだ何が何やらわからない慚愧ざんき、後悔の冷汗が全身に流るるのを、どうする事も出来ないままうなだれた。
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
折角せっかく死んでも、それを食べてれる人もなし、可哀そうに、魚はみんなシャベルでかまになげまれ、煮えるとすくわれて、締木しめぎにかけて圧搾あっさくされる。釜に残った油の分は魚油です。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いつか廣介の両手が、鉄の締木しめぎの様に、異様な力を以て、千代子の肩を抱き締めていました。彼女は今は、猫の爪にかかった鼠の様に、逃げようとて逃げることも出来ないのです。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
荏胡麻えごまの実を臼に入れて搗き締木しめぎにかけて油を搾った残りを、やはりその多くの産地では子供が貰って喜んで食べた。多く食べると下痢をしやすいものだったという(三州奥郡風俗図絵)。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
目的は——本当の目的は、俺達をウンと働かせて、締木しめぎにかけて、ギイギイ搾り上げて、しこたま儲けることなんだ。そいつを今俺達は毎日やられてるんだ。——どうだ、この滅茶苦茶は。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
帯の間へ手を入れて、石のようにこわばったお綱の物言いぶりが、あまりにも真味しんみに迫っているので、よいほどにあしらっていられない責任感が、万吉の心をまで、締木しめぎにかけてきたのである。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よウし! この辺からソロソロ締木しめぎを責めてやろうか。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)