綾瀬川あやせがわ)” の例文
松平蔵之丞様まつだいらくらのじょうさまのお屋敷と、須田村すだむらの間をぬけて、関屋せきやの里まで行き着いた主従四人は、綾瀬川あやせがわの橋のたもとにたちどまって
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その上綾瀬川あやせがわその他支流や入江いりえなども多く、捜査範囲は非常に広い地域にわたり、如何いかな警察力を以てしても、余りにも漠然ばくぜんたる探し物であった。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
幡随院舟はずっと上の綾瀬川あやせがわ、加賀芳舟は東橋、わっちども但馬屋舟はこのあたりにしようとここで相談しておったら、変な男が、三、四人やって来てね
屋根船を綾瀬川あやせがわまでのぼせて、静かな月と静かな波の映り合う真中に立って、用意してある銀扇ぎんせんを開いたまま、夜の光の遠くへ投げるのだと云うじゃありませんか。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かねふち綾瀬川あやせがわなぞの蘆の茂りの蔭に舟をつないで、代数や幾何学の宿題を考えた事もあった。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
昔の通人は屋根船を綾瀬川あやせがわまで漕ぎ上せて、月下の水に向って開いた銀扇を投げる。地紙の銀泥が月光を受けて、きらきら光りながら水に落ちるのを興じたものだという。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
恭太郎諸共クリ/\坊主になりまして、めいの若草もまた子供もういうことになるも皆約束事だろうと思い、綾瀬川あやせがわの渡口へ庵室を作り、念仏を唱えながらこいしを拾って山のように積み上げるという
「そうですなア向島むこうじまが一番ひどいそうです。綾瀬川あやせがわの土手がきれたというんですからたまりませんや。今夜はまた少し増して来ましょう。明朝みょうあさの引き潮にゃいよいよ水もほんとに引き始めるでしょう」
水籠 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
わたくしはこの堀割が綾瀬川あやせがわの名残りではないかと思っている。堀切橋の東岸には菖蒲園しょうぶえんの広告が立っているからである。下流には近く四木よつぎの橋が見え、荷車や自動車の往復は橋ごとに烈しくなる。
放水路 (新字新仮名) / 永井荷風(著)