結飯むすび)” の例文
それから、昼弁当の結飯むすびをこしらえ、火にかざして、うす焦げにして置いて、小舎の傍からむしって来た、一柄五葉の矢車草の濶葉に一つずつ包む。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
かれははしをとらないで、「申しかねますがこれで結飯むすびを作って頂けませんか」と云った、「結飯はべつに作ってあげますからこれはこれで召しあがれ」
日本婦道記:尾花川 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あの時は新七が宿屋を探してくれてね。その宿屋でお結飯むすびを造ってくれたとお思い……子供がそのお結飯を見たら、手につかんで離さないじゃないか。みんな泣いちまいましたよ……
食堂 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一行は高山植物の草原に足を投げ出して、塩のない、皮の固い結飯むすびを喰い初めた、福神漬のさいに、茶代りの雪を噛んだが、のどがヒリつくので、米の味も何もなかった。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
味噌をブチ込んで「おじや」をこしらえてすする、昼飯の結飯むすびは、焚火にあてて山牛蒡やまごぼうの濶葉で包む、晃平の言うところによると、西山の村では、この牛蒡の葉を、餅や団子にね入れて
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
河原へ下りる、鉱山発掘のあとの洞穴があって、その近傍だけは、木材を截って櫓井戸やぐらいどを組み合せ、渋色をした鉱気水が、底によどんでいる、暫らく休んで、はぜのつくだにで、冷たい結飯むすびを喰べたが
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)