経験おぼえ)” の例文
旧字:經驗
不可いけません、そういたすとまた新聞で散々悪体を申すだろうじゃございませんか。」とは在原夫人、御自分経験おぼえがあればなり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自己おのれよりは一倍きかぬ気の夫の制するものを、押返して何程云ふとも機嫌を損ずる事こそはあれ、口答への甲斐は露無きを経験おぼえあつて知り居れば
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
松太郎は、二十四といふ齢こそ人並に喰つてはゐるが、生来うまれつきの気弱者、経験おぼえのない一人旅に今朝から七里余の知らない路を辿つたので、心のしんまでも疲れ切つてゐた。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
女スパイには経験おぼえがあるんだ。これ位の女になるとモウこの上に泥を吐く気づかいはないんだ。それよりも身体からだ中をスッカリ調べろ。喰い付かれるなよ。誰か片手で頭の毛を掴んでろ。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お身さまにも、そんな経験おぼえが、おありでせう。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
物語の銀六は、蛇責へびぜめかまりたる身の経験おぼえありたれば、一たびその事を耳にするより、蒼くなりて、何とて生命いのちの続くべきと、おいの目に涙うかべしなり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
口答えの甲斐かいは露なきを経験おぼえあって知り居れば、連れ添うものに心の奥を語り明かして相談かけざる夫を恨めしくはおもいながら、そこは怜悧りこうの女の分別早く
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
お身さまにも、そんな経験おぼえは、おありでがな。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)