紫雲英れんげそう)” の例文
落葉木らくようぼくは若葉から漸次青葉になり、すぎまつかしなどの常緑木が古葉をおとし落して最後の衣更ころもがえをする。田は紫雲英れんげそうの花ざかり。林には金蘭銀蘭の花が咲く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
勿論もちろん、根を抜かれた、肥料こやしになる、青々あおあおこなを吹いたそら豆の芽生めばえまじって、紫雲英れんげそうもちらほら見えたけれども。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
下手へたな理髪師に刈り込まれたように重なり合って、東は町はずれからすぐ稲田になっている、その刈田や段畑のあちこちに、紫雲英れんげそう、菜の花などが咲き初めても
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
稲田の畔道には、紫雲英れんげそうの返り咲きもあった。小川の中や稲田の水口には、小さな魚が群れていた。
土地 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
趣味を先ず第一に見る其子の為にも不仁の水とは云われない。此水あるが為に田圃がある。春は紫雲英れんげそう花氈はなむしろを敷く。淋しい村をにぎわしてかわずが鳴く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
まだ北風の寒い頃、子を負った跣足はだしの女の子が、小目籠めかいと庖刀を持って、せり嫁菜よめななずな野蒜のびるよもぎ蒲公英たんぽぽなぞ摘みに来る。紫雲英れんげそうが咲く。蛙が鳴く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)