紛擾ごたごた)” の例文
私は町の団体の暗闘にいて多少聞いたこともあるが、そんなことをここで君に話そうとは思わない。ただ、祭以前に紛擾ごたごたを重ねたと言うだけにして置こう。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「どうしたというんだろう。」と、母親は会社の紛擾ごたごたから引き続いて、心配事ばかり多い弟の体を気遣った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
給料の支払が何日いつでも翌月になるとか云ふ噂、職工共の紛擾ごたごたが珍しくなく、普通あたりまへの四頁の新聞だけれど、広告が少くて第四面に空所あきが多く、活字が足らなくて仮名許り沢山使ふから
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
貸座敷、待合茶屋、芸者家などの亭主と客との間もまた同じことで、此両者の対談する場合は、必ず女を中心にして甚気まずい紛擾ごたごたの起った時で、然らざる限り対談の必要が全くないからでもあろう。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
お銀は萌黄もえぎの大きな風呂敷包みを夜六畳の方へ持ち込むと、四ツ谷で聞いて来たといって、先に縁づいていた家の、その後の紛擾ごたごたなどを話してあおくなっていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
この日は、町に紛擾ごたごたのあった後で、何となく人の心が穏かでなかった。六時頃に復た本町の角へ出て見た。「ヨイヨヨイヨ」という掛声までシャガレて「ギョイギョ、ギョイギョ」と物凄ものすごく聞える。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
小野が少し食べ酔って管をいたくらいで、九時過ぎに一同無事に引き揚げた。叔母と兄貴とは、紛擾ごたごたのなかで、長たらしく挨拶していたが、出る時兄貴の足はふらついていた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そして紛擾ごたごたする病室を出ると、いきなり帽子を取って外へ出て行った。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
帰って見ると、店が何だか紛擾ごたごたしていた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)