紗綾形さやがた)” の例文
その刺子模様は麻の葉だとか紗綾形さやがただとか、定紋じょうもんだとか屋号だとかを入れ、なかなか心の入った仕事を見せます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
紗綾形さやがたの地紋のある黒縮緬くろちりめんでそれを製し、鈴屋衣すずのやごろもととなえて歌会あるいは講書の席上などの式服に着用した人であるが、その袖口そでぐちには紫縮緬の裏を付けて
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一銭が紫粉むらさきこで染返しの半襟も、りゅうと紗綾形さやがた見せたであろう、通力自在、姐娘の腕は立派である。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
紗綾形さやがたとか市松いちまつとか菱紋ひしもんとか、線の組合せで様々な紋様を織り出します。時には手をかけてかすりをも試みます。日本味のある敷物として永く栄えしめたい仕事であります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
毛一筋も乱れない円髷のつやこぼさず、白粉の濃い襟を据えて、端然とした白襟、薄お納戸のその紗綾形さやがた小紋の紋着もんつきで、味噌汁おつけよそ白々しろしろとした手を、感に堪えて見ていたが
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まんじくずしの紗綾形さやがた模様のついた白綾子しろりんずなぞに比べると、彼の目にあるものはそれほど特色がきわだたないかわりに、いかにも旧庄屋風情ふぜいの娘にふさわしい。色は清楚せいそに、情は青春をしのばせる。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
輝くはだ露呈あらわして、再び、あの淡紅色ときいろ紗綾形さやがたの、品よく和やかに、情ありげな背負揚が解け、襟が開け緋が乱れて、石鹸シャボンの香を聞いてさえ、身にみた雪をあざむく肩を、胸を
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)