糞壺くそつぼ)” の例文
煙草の煙や人いきれで、空気が濁って、臭く、穴全体がそのまま「糞壺くそつぼ」だった。区切られた寝床にゴロゴロしている人間が、蛆虫うじむしのようにうごめいて見えた。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
ただ大道上に一空地を劃し低き土壁をめぐらしたるのみにて糞壺くそつぼもなければ小便だめもなく皆垂流たれながしなり
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
腐れかけた麦藁屋根むぎわらやね、ぼろ/\くずれ落ちる荒壁、小供の尿いばりみた古畳ふるだたみが六枚、茶色にすすけた破れ唐紙が二枚、はえたまごのへばりついた六畳一間の天井と、土間の崩れた一つへっついと、糞壺くそつぼの糞と
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
……学生上りは「糞壺くそつぼ」の方へ、タラップを下りながら、考えていた。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)